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令和7年4月18日(金)

まもなく穀雨
― 新茶の季節、心と体にひとときを

穀雨とは春の終わりを告げる節気で、田畑にたっぷりと雨が降り注ぎ、穀物の成長を助けるころとされています。4月20日ごろにあたるこの時期は、春から初夏へと自然が装いを変える、まさに季節の分かれ目。草木はぐんぐんと芽吹き、山々はやわらかな緑に包まれます。

そんな「穀雨」の頃、日本にはもうひとつの風物詩がやってきます。それが「新茶」の季節です。立春から数えて88日目、いわゆる「八十八夜」に向けて、各地の茶畑では早朝から新芽を摘む風景が広がります。この時期に摘まれた茶葉は、冬の間に蓄えた栄養をたっぷりと含んでおり、まろやかな甘みと清々しい香りが特徴です。

当店でも、5月上旬頃になると新茶を楽しみに訪れるお客様で活気づきます。棚に並ぶ産地直送の新茶は、まさに“旬のごちそう”。新緑の香りとともに、一足早く初夏を感じてみませんか?

■ 新茶とは何か ― その特別な存在感

春も深まり、風に緑の香りがまじる頃、日本には「お茶の季節」がやってきます。「新茶」とは、その年の最初に摘まれた茶葉から作られるお茶のことを指します。具体的には、立春(2月初旬)から数えて88日目、いわゆる「八十八夜」(5月初旬ごろ)を目安に摘み取られることが多く、この時期に収穫される茶葉は特に香り高く、甘みが強く、旨みが濃いことで知られています。

冬の間にたっぷりと養分を蓄え、春の日差しを受けて芽吹いたばかりの若葉は、そのまま「自然の恵み」と言っても過言ではありません。新茶は年に一度だけの贅沢。まさに「旬の味覚」です。

例年,5月上旬になると産地から直送されたばかりの新茶が並び、常連のお客様の間では「今年はどこのが一番香り立つかな?」と品定めの声が飛び交います。市場の活気とともに、新茶の豊かな香りが初夏の訪れを感じさせてくれます。

■ 歴史のなかの新茶 ― 文人・武将にも愛された初摘み

日本にお茶が伝来したのは、奈良時代末から平安時代初頭とされ、最初は仏教儀式の一環として僧侶たちが用いていました。その後、鎌倉時代に栄西禅師が中国から抹茶の製法を伝えると、お茶は次第に武士階級へと広まり、江戸時代には庶民にも愛飲されるようになります。

実は新茶に関しては、あの徳川家康にも逸話があります。家康は晩年、健康を非常に気にかけていたことで知られていますが、駿府(現在の静岡県)に隠居していた際、新茶が届くのを毎年楽しみにしていたと記録に残っています。当時の茶は薬に近い感覚で、若葉の生命力を吸収するという信仰的な意味もあったようです。

また、俳人・小林一茶も新茶を詠んだ句を残しています。

「新茶の香 真昼の眠気 転じたり」

この句には、新茶の爽やかな香りによって春のうららかな午後の眠気が吹き飛ぶ様子が描かれており、新茶の季節を感じさせる風情があります。

■ 新茶の文化的側面 ― 風習と季節を彩る存在

新茶は単なる「お茶」ではありません。日本人の暮らしのなかで、季節の節目を告げる風物詩として親しまれてきました。とくに「八十八夜に摘んだ新茶を飲むと長生きする」という言い伝えは有名で、今でもこの日に合わせて収穫・出荷する茶農家が多くあります。

茶摘みは、かつて農村部で春の共同作業のひとつとして行われ、歌を口ずさみながらの作業はまさに季節の祭り。現在でも観光地などでは「茶摘み体験」が行われることがあり、文化的価値を体感できる貴重な機会となっています。

贈答用としての新茶も人気が高く、とくに当店では、八十八夜摘みの新茶を詰めた限定ギフトセットが毎年好評を博しています。健康・長寿・家内安全を願う気持ちを込めて、親しい方への贈り物に選ばれてます。

■ 現代の暮らしと新茶 ― 急須で淹れる、静かな贅沢

現代では、コンビニや自販機で手軽にお茶が手に入る時代です。しかし、そんな時代だからこそ、急須で淹れる「一杯の新茶」の価値が見直されています。

たとえば、忙しい朝に少しだけ早起きして、新茶を丁寧に淹れる時間を持つ。それだけで、まるで禅のような静けさが生活に流れ込みます。香りを吸い込み、ほんのりとした甘みを感じながら湯呑みを口に運ぶ。たった数分で、心と体がほどけていくような感覚があります。

当店では、急須に適した細かな葉の新茶から、冷茶におすすめのすっきりとした仕上がりのものまで、用途や好みに応じた新茶がそろいます。新茶淹れ方のコツもお伝えし、毎年この時期は「お茶談義」で活気づきます。


■ 新茶を使った簡単スイーツレシピ:新茶の香りミルクプリン

【材料(2〜3人分)】

  • 新茶の茶葉(できれば粉末状や細かいもの)…小さじ2
  • 牛乳…300ml
  • 砂糖…大さじ2
  • ゼラチン…5g
  • 水…大さじ2(ゼラチン用)

【作り方】

  1. 小鍋に牛乳と新茶を入れ、弱火で5分ほど温めて風味を引き出す(沸騰させないよう注意)。
  2. 砂糖を加えてよく混ぜ、火を止めて茶こしでこす。
  3. 水でふやかしておいたゼラチンを加え、完全に溶かす。
  4. 容器に移し、冷蔵庫で2〜3時間冷やし固める。

【アレンジ例】

  • 黒蜜をかけて和風に
  • あんこときな粉で懐かしスイーツ風
  • 白玉や抹茶アイスと合わせて豪華な一品に

お子様のおやつや、おもてなしのデザートとしても最適。手軽ながらも新茶の香りが活きる、春ならではの味わいです。


■ 最後に ― 旬を味わう、心を潤す

春の終わりと夏のはじまりをつなぐこの季節、新茶はまさに「移ろいを味わう」存在です。香り、味、色…そのすべてが一瞬の季節を閉じ込めたような美しさ。桐生市場の店頭に並ぶ新茶たちは、そんな自然の恵みを身近に届けてくれます。

今年は、少しだけ立ち止まって、新茶の一杯を楽しんでみませんか?いつもの日常に、ほんのりと春の余韻と安らぎが加わることでしょう。

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